カナリアボックス 1日目


 憂鬱で退屈な一日が今日もようやく終わる。
 夕方の渋谷駅は家路につく学生やビジネスマンで溢れかえっており、その様子に彼は溜息を吐いた。
「……せめて、この人混みさえなければな」
 毎朝毎晩、うんざりする。
 わざわざ渋谷の高校を選んだのは自分自身だが、あと二年近くこんな通学をしなければならないのかと思うとその選択も後悔したくなっていた。
 そんなことを思いながらも人と人の間をすり抜けながら改札に向かっていると、突然右側から誰かがぶつかってきた。
「きゃっ……!」
 人の多すぎる渋谷ではよくあることだ。別に構わないし、これくらいでトラブルに発展させられる人間の方がどうかしていると思っている。
 とはいえ無視するべきか謝るべきか迷い、歩調を緩めながらも視線だけをそちらに向けると、彼よりも頭二つは背の低い少女がよろけて尻餅をついた。
 思わず足を止める。
 長いブロンド、ガラス玉のように透き通る碧眼、フリルの多いちょっとしたドレスのような服装、西洋系の整った顔立ち。その人形のような姿に、なんと声を掛けるべきか迷う。英語でよいのだろうか、と思いつつ口を開こうとしたが、少女が先に声を上げた。
「ご、ごめんなさいっ! 大丈夫!?」
 流暢な――というより、どう聞いてもネイティブな日本語に面食らう。
「いや、僕はなんとも……。君こそ――」
「――あっちへ行ったぞ! 急げっ!」
「くそ、人が多すぎる。……邪魔だ、どけ!」
 ざわめきに紛れ、少し遠くから複数の男の声。
「……っ……!」
 それに少女は身を強張らせ、怯えたような視線をそちらに向けた。
 状況はよく分からないが、どうもこのままでは面倒なことに巻き込まれそうで、彼は顔を顰める。
 絶対に関わらない方がいい。
 このまま黙って立ち去るべきだ。
 親切心など出したところで、いつだってロクなことにはならないのだから。
 転んだ外国人の少女に、荒っぽい声に、それでも通行人は誰も彼も素知らぬ振りで――まあ当然だろうと彼も思う。
「……」
 だが。
「追われている……のか?」
 タイミング悪くぶつかってしまった負い目がなくはない。
 気が進まないながらも、彼はそう問う。
 そして、問いながらも周囲の状態を確認する。
 声の主はおそらく人混みの向こうで、まだそれらしき人間は見えない。
 すぐ近くに、渋谷が終着駅である井の頭線の改札。
 分かれ道。
 無人のインフォメーションカウンター。
「……うん」
 少女は彼を見上げて、小さく頷く。
 その視線から感情を読み取るには、彼には人付き合いの経験がなさすぎた。
 戸惑ったような、不安そうな、助けを求めるような、そんな視線――だと思いたい。
 彼は溜息を吐いた。彼女に対してではなく、馬鹿な自分に対して。
「……。……そこのカウンターの陰に隠れろ。急げ」
 人混みの向こうを睨みながらもそう言うと、彼女は少し驚いた表情を見せてから、黙って頷き、言われた通りに身を隠す。
 彼はその反対側、つまり追ってくる人間から見えるであろう位置にもたれて、いかにも人を待っているような振りをする。
 ほんの数秒で、ダークスーツ姿の男が四人、辺りを見回しながら人混みを掻き分けてきた。
「見失ったか」
「ちっ……どこに行きやがった」
 あからさまに怪しい。
 それでも通行人はその存在に気付いていないかのように通り過ぎてゆく。まあ、そうだろう。彼だってあと数秒遅くここを通りかかっていればきっとそうしたはずだ。
 追ってきたのが警官か何かなら少女を差し出しても良かったのだが、ここは彼女の味方をしておいた方が後味が悪くなさそうだ。
 四人はいずれもそれなりには鍛えられた身体に見えるが――仮に実力行使に出て来られても勝てる、と思う。とはいえ、そうならないことを祈るが。
 不自然にならない程度に視界の端で冷静に彼らを観察していると、そのうちの一人が近寄ってきた。
「そこのガキ」
 彼は素知らぬ振りでその男に顔を向ける。
「……僕ですか?」
 誰かを捕まえて尋ねるとすれば……と考えて目立つ場所で人を待つ振りをしたのが正解だった。
「今、ここを外国人の娘が通っただろう。金髪で紫色の服だ」
「ああ、はい。見かけましたけど」
「どこに行った?」
「そこの改札に入っていきましたよ」
「何っ……!?」
 淡々と答えると男は慌てる。
「次の電車は……一分後ですね。まだ間に合うんじゃないですか」
「ちっ……おい、電車だ! 急げ!」
 礼も言わず、男は他の三人と共に改札へと駆け込んでいった。
 四人が見えなくなりしばらく経ってから、彼はひとつ息を吐く。
 念のため改札に注意を向けながらもカウンターの裏に回ると、しゃがみこんでいた少女が不安げな表情で見上げてきた。
「……行った?」
「ああ。……とはいえ、戻ってこないとも限らない。早く場所を移った方がいいぞ」
 ラッシュ時の七両編成。いくら彼女が目立つ容姿とはいえ、たった一人がそこに乗っていないと断定できるまでには多少時間が必要だろう。しかし相手は四人いる。彼の嘘を完全に信じていても、改札内を探すために一人か二人は駅構内に残っている可能性も高い。
「……うん、そうだね。……あなたは、このあとどうするの?」
 細い脚で立ち上がった少女に問われ、どう答えたものか少し迷ったが、正直に答えることにする。
「……僕もここから電車で帰るんだ」
「そっか。あの……何か、お礼にできること、ないかな?」
 申し出に、彼はかぶりを振る。
 正直なところ、これ以上の面倒事は勘弁願いたかった。
「大したことはしていない。いいから、早く行け」
 それだけ言って踵を返すと、後ろから「ありがとう」という返事。
 無視して改札へ向かい、定期券を取り出しながらちらりと視線だけを向けると、彼女もまた元来た方向へと歩き出しており――しかし、まるで視線に気づいたかのようにくるりと彼を見て、にっこりと笑って手を振ってくる。
 さっさと行け、とジェスチャーだけ返してから改札を抜け、それ以上は振り向かなかった。

 それからは特に何もなかった。
 改札内であの男たちと鉢合わせることすらなく、拍子抜けするほどいつも通りに帰宅して、いつも通りに一晩を過ごし、いつも通りにまた退屈な今日を迎え、居心地の悪い教室の自分の席に収まっている。
 授業中にも関わらず喋っている数人のクラスメートの声が耳障りだ。
 その嘲笑や侮蔑が自分に向けられていることを彼は知っている。存在しないかのように扱われるのも、陰口を叩かれるのも、ありもしない噂を流されるのも、いつものことだ。何年もその調子なのだから、今更気にしたところで無駄以外の何物でもない。
 彼はひとつ溜息をついて、ぼんやりと窓の外を眺めながら昨日のことを思い出す。
 変化のない退屈な日常に、小説のワンシーンが何かの間違いで突然挟まったようだった。唐突に始まって唐突に終わった数分間。もしかすると夢だったのでは、と自分の記憶すら疑いそうになる。
 何があって追われていたのかは知らないが、あの少女は無事に逃げ切れただろうか。余計なことをしてしまったわけではないだろうか。
 考えたところで、もはやそれを知る術はないが――
「……?」
 視界のどこかに、違和感がちらついた。
 意識を、考え事から眼下の景色に移す。
 体育の授業中なのか煩い声の響く校庭。その外側に広がる住宅街や小さな雑居ビル。遠くの街から伸びる高層ビル、晴れ渡った空。
 見渡していて最初に気付いた異変は、街の色だった。
 妙に赤い、と感じる。
 光の加減の問題だろうか、と考えてみるが、それにしては妙だ。昼を回ったばかりでまだ日は高い。
 しかも、その赤みはじわじわと強くなっているように見えるのだ。
 どういうことなのか、全く理解ができない。
 首をひねりながらも視線を校庭に落とすと、ぽつぽつと小さな赤い染みのようなものが現れている。距離があってその正体は分からなかったが――しかしそこに、それ以上の異変が起こった。
 ――人間ではない何かがいる。
 やはり距離のせいでよく分からないが、大型犬か何かが校内に迷い込んだのだろうか?
 注視していると、のそのそと歩いていたその獣らしき何かは突然勢いよく走り出し、一人の生徒に飛びかかった。
 血が派手に飛び散る。
 遠い悲鳴がいくつも上がるが、教室内の誰も興味を示さない。確かに歓声か何かに聞こえなくもない、と冷静に思いながら、彼は黙って校庭を見下ろし続ける。彼が特段リアクションを取らずとも、授業中ならその場にいる教師が適切な対応を取ることだろう、と判断する。無駄な上に目立つことはしたくない。
 獣は窓からは見えない範囲に走り去って行ったが、まっすぐ四階のこの教室に来るようなこともないだろうから心配もしない。
 出血がひどいのか真っ赤に染まった生徒は地面に転がったままで、しかし誰かが救護に向かう様子もない。さすがに顔をしかめるが――それを一瞬で忘れるほどの、新たな異変が起こった。
 倒れた生徒の上を、何かの巨大な影が走る。それも複数。
 訝しく思い上空に視線を戻し――
「っ……!?」
 ガタン、と派手な音を立てて咄嗟に立ち上がる。
 一気に教室中の視線が集まったことを感じるが、そんなことはどうでもいい。
 上空、というよりも校舎のすぐ上ほどの高さを、見たこともない数匹の生物が飛び回っている。
 爬虫類を思わせる皮膚、図鑑で見た空飛ぶ恐竜のようなフォルム。
 その一匹と目が合ったのだ。
「おい、何してる。座れ」
 異変に気付いていない教師の言葉は無視する。
 というよりも、声が出ない。
 そこでようやく、彼の視線を追ってみたらしい誰かが息を呑む。
 目が合った化け物は、群れから離れて飛行の軌道を変え、まっすぐこちらに突っ込んできた。とんでもない速さで。
 同時に、全速力で窓から離れ、転がるように教室を飛び出す。注意喚起をしてやるような余裕も義理もない。
 ガラスの割れる音、コンクリートの砕ける音、肉の潰れるような音、耳をつんざくようなクラスメートの悲鳴。
 コンクリートや木やガラスの破片が、血が、廊下にまで飛び散ってくる。
 窓際にいた他の生徒は壁ごと切り裂かれたかもしれない。
 だが、その様子をのんびり観察するつもりはない。顔も名前も覚える気になれないクラスメートはどうだっていいからだ。
 彼は背後に目もくれず駆け出し、迷わず学校を脱出した。

「……くそ」
 彼は、大破した携帯電話を投げ捨て、小さく毒づく。
 学校を脱出したはいいものの、渋谷の街全体が似たような――いや、更に酷い状況だった。逃げ出した直後に兄からかかってきた電話によると、渋谷だけでもないようだったが――通話は一分ともたず途切れ、そのままどことも繋がらなくなった。
 街が赤く見えていたのは、校庭の赤い染みのようなものは、見たこともない真っ赤な花だった。地面にも建物の壁にもびっしりと生えていて気味が悪い。
 そして、街の至るところを大小様々な化け物が闊歩している。人間は殺され、食いちぎられ、死体と血で溢れている。
 まるで地獄だ。
「何なんだよ、これはっ……」
 吐き気が何度も込み上げてくる。既に二度吐いたがこれ以上は吐けるものもない。耐え難い気持ち悪さだけが喉の奥から胃の底までを満たしている。
 なんとかここまでは逃げ延びてきたものの、これからどうすればいいのか見当もつかない。こんなことになっているのがどのくらいの範囲なのかは分からないが、逃げるのに適した安全な場所など、全く心当たりがない。
「……ムラサメ、だよな……?」
 そんな中、突然名字で呼ばれて思考が止まる。
 反射的に声の聞こえた方を振り向くと、腰から下が瓦礫に埋まった状態で倒れた男子学生が顔だけを上げていた。
 自分と同じ制服。どこかで見覚えがあるような気がしなくもない顔は血まみれで、痛みだか恐怖だかに引きつっている。
「た、頼む……。こいつをどけるの……手伝って……くれねぇか……」
 息も絶え絶えにそう告げる。
 それに彼は表情も変えず、どうしたものかと一瞬だけ迷う。
 助けるか助けないかではなく、無視するか断るかを。
 ――まあ、答えを返してやる意味もない。
 無視することに決めて立ち去る様子を見せた彼に、その男子学生はますます顔を引きつらせた。
「お、おい! わ……悪かった! 今までのことは謝る! だから……」
 彼はその様子を冷たく見下ろす。
 命乞いのような声が不快で、やはりはっきり断ることにしたのだ。
「……君たちの言っていた通り、僕はろくでもない人間だからな。助ける義理はないし、助けても何の得にもならない」
 そもそも、この瓦礫をどけたところで助からないだろう。見る限り足は潰れているだろうし、出血も多すぎる。やるだけ無駄だ。作業に伴うリスクも大きすぎる。それに、もし仮に無事に助かったところで、一体どんなメリットがあるというのか。
「っ……違う! オレはただ、みんなに合わせていただけで……」
「勘違いするな」
 仮にこれが兄や姉ならわずかな希望に懸けてでも助けようとするだろうが、ここにいるのは、ただ同じ制服を着ているだけの、顔すらうろ覚えの人間だ。
「くだらない仕返しのために助けないんじゃない。君が生きようが死のうが興味がないだけだ」
「そ、そんな……」
 それに、そうは言っても、自分が特別薄情な選択をしているとは思わない。この状況で自らの命を危険に晒して他人を助ける余裕のある人間などいるものか、と彼は思う。
「他を当たるんだな」
 そう言い捨てて今度こそ踵を返した。

 ――物心がついた時からずっと、友人と呼べる存在はいない。
 何をしても疎まれ、あるいは妬まれ、もしくは蔑まれ、距離を置かれる。
 同年代だけではなく、学校の教師にも、習い事の武道の師範にも。
 ごく普通に接してくれるのは親兄弟だけだった。
 だから本当は――昨日、あの少女を助けるのは少し怖かったのだ。
 他人を助けようとすると必ず、傲慢だとか、余計なお世話だとか、そういう言葉で拒絶されるものだから。
 ただ、何年も同じ時間を共にしなければならない同級生ではなく、その時限りなのだから何を言われようとも差し支えないと割り切ってああしただけだった。
 少なくとも、礼を言われるとは思っていなかった。
 ずっと繰り返されてきたつまらない日常の最後を、そんな言葉で飾られるとは思っていなかった。
「――っ!?」
 そんなことを考えながら死体と瓦礫と血の海の中を当てもなく逃げ続けていると、突然、右手の甲に軽い衝撃と痛みが走った。
 浅い擦り傷、血、そして少しだけ緑がかった妙な色に変色した傷口。
 慌てて振り向くと、数メートル離れた位置で、巨大な蛙のような姿の化け物がこちらを威嚇するように口を開いている。
 蛙は息を吸い込むような動作ののち、緑色の何かを彼に向かって吐き出す。
「しまった……っ」
 近付いてくる化け物はなんとか返り討ちにしたり逃げ切ったりしていたが、離れたところから狙撃してくることまでは考えていなかった。
 それはなんとか避けるが、どうやら手の傷はこの攻撃のせいのようだ、と悟る。
 利き手が無事なのは幸いだった。足元に落ちていた、握り拳ほどの大きさのコンクリート片を左手で拾い上げすぐさま投げつけると命中し、手負いの蛙はよたよたと逃げていった。
「くそ……」
 呻きながらも、他に同じような化け物がいないかと周囲を見回し――背筋が凍った。
 背後から、数匹の化け物がこちらを見ていたのだ。
 逃げて行った蛙と同種のもの、兎のような姿のもの、ドロドロと動く流体の塊。
 それらが数匹ずつ、じりじりと近寄ってきているのだ。
 飛び道具を持つ蛙、既に足が異様に速いのを見てしまった兎、そして何をしてくるのかもよくわかっていない不気味な流体。
 一匹ずつならなんとか撃退することもできている相手だが、何匹もいるとなると絶望的だ。
 まともに逃げられるとも思えない。
「……さすがに……ここまで、か」
 とはいえ何もせず諦めるつもりはない。兎に追いつかれることを承知でまっすぐ逃げるか、それとも化け物が更に潜んでいる可能性もある建物に逃げ込むか。
 後者を選ぼうとして、化け物に背を向けないよう後退りし――その足が、よろける。
「えっ……」
 踏ん張ろうとしても力が入らず、あっさりと身体が転がる。視界がぐるりと回る。うまく受け身を取れず、全身を地面に打ち付ける。
 そこに蛙の一匹が緑色の液体を吐き出してきて、脚に直撃した。
「ぐあっ……!?」
 じゅう、と焼けるような嫌な音。
 激痛が走る。力が入らないことと痛みのせいで、もはや立ち上がることすらできそうにない。
 運悪く、手の届く範囲には武器になりそうなものも見当たらないし、そもそも手先すらうまく動かせなくなっていることに気付く。
 やはりここまでか、と諦めて、目を閉じた。死ぬことはさほど怖くもないが、痛みは苦痛だ。蛙の吐く液体や兎の尖った牙が間近に迫るのも見たくはない。できるならせめて即死させてくれ、と祈る。
 どうか――
「やめてっ……!」
 ――
 誰かの声が響いた。
 思わず目を開けると、化け物たちがほとんどすぐ側まで迫っており――しかしその瞬間、その姿を巨大な炎が包んだ。
 鼻先が焦げそうなほどの熱量に、思わずもう一度目を閉じる。
 熱が拡散した頃に目を開くと、黒く焦げ付いたアスファルトと、その上を走ってくる細い足が見えた。
「大丈夫っ!?」
 身体が動かない。なんとか視線だけをもう少し上げると、ぼやけた視界の中、見覚えのある少女が青い顔でこちらを見下ろしていた。
 夢、だろうか?
「……昨日……の……」
 細かい傷や汚れにまみれているが、それでも人形のような姿。
 間違いなく、昨日出会った少女だ。
 彼女もはっとする。
「えっ……あれっ、ホントだ。昨日の……っじゃなくって。待ってて、すぐに手当てするから」
 そう真剣な表情で告げた。
 動けない彼の隣に膝をついて、傷のある脚に触れる。
「駄目だ……」
 彼は声を絞り出す。
「他人を……助けている場合、か……。ここは……危ない。すぐに……逃、げ……」
 声まで上手く出なくなってきた。
 何故か、彼女は少し嬉しそうに笑う。
「大丈夫だよ。ちょっと待ってて」
 やめろ。
 全く身体が動かせない人間など、こんな状況で助けるべき相手じゃないんだ。
 自分なら絶対に見捨てる。あの男子学生の方がまだマシだった。
 道連れになどしたくない。
「傷は大きくないし、すぐに塞げる。動けないのは毒のせいみたい。軽くできると思うから……ゆっくり、深呼吸していて」
 少女はきっぱりとそう言い放つ。
 頭まで回らなくなってきた。彼女が何を言っているのか理解ができない。
 やめろ。ここから離れろ。
 もう、意識が――消えそうなんだ。

 ――
 彼が目を開けると、ビルに縁どられた青い空があった。
「っ……!?」
 咄嗟に上半身を起こす。少し頭が痛い。ぐらぐらする。
「あ……大丈夫?」
 傍らに座り込んでいたブロンドの少女は彼の顔を覗き込み、にっこりと笑った。
 手や脚に受けたはずの傷がない。痛みもない。身体も動いている。
 現状を把握したかったが、そんな悠長なことをしていていい状況とは思えなかった。
 破壊された街、折り重なる死体。化け物はどこからでもやって来るだろう。
「ああ。……ひとまず、移動するぞ」
 立ち上がってみると問題なく歩ける。傷を負ったのは夢だったかとも思ったが、攻撃を受けたあたりのスラックスの生地がボロボロに溶けたようになっている。
「えっ……う、うん」
 隙だらけの歩き方でひょこひょことついて来る少女の様子は、とてもではないが、化け物を相手にできるようには見えない。
 分からないことばかりだ。一体何があった?
 そんなことを思いながらも、彼は大きい通りから少し裏に入ったところのコンビニを覗き込んだ。
 停電しているらしくガラスの自動ドアは開きっ放しで、照明の消えた店内を少し見た限りでは化け物も人間もいない。
「そこで待っていろ。何か出てきたら知らせてくれ」
 入り口に立つ少女にそう告げて、答えは待たず、レジカウンターの中や店員の控え室なども確認する。
「何もいないな。ひとまずは安全だろう」
 動かない自動ドアを手で押して無理矢理閉めて、外が見える場所を選んでとりあえず座り込む。さすがに疲れた。
「今日は君に助けられたな。……ありがとう」
 少女も彼の側にちょこんと座り、にっこりと笑った。
「ううん。昨日助けてくれたお礼、してなかったから」
 昨日は大したことなどしていない。さすがに割に合わないはずだ、と彼は思う。
 だが、そんな話をしている場合でもない。一刻も早く状況を把握しなければ命に関わる。とはいえ――
「……訳の分からないことが多すぎて、どこから考えるべきかも分からないな」
 溜息を吐く。少女もまた「そうだよね」と苦笑した。
 しばらく何かを考えるように黙っていたが、
「結局、あの後もずっと渋谷にいたんだけど……。今日の午後になって、街の中にあの赤い花が咲き始めたのを見たんだ」
 と、話し始めた。
「すごい速さで増え始めたから、ちょっとした騒ぎになってたんだけど……そのうち……どこからか、あんな化け物がたくさん現れて、人間を襲い始めた」
 彼女は自分の身体を抱き締めるように、ぎゅっと身を縮める。
「街中パニックになって……逃げ回ってるうちに、化け物もどんどん増えてきて、生きてる人はどんどん減ってきて……そこで、あなたを見つけたの」
「僕も同じようなものだな。ただ……」
 そこで彼は一度言葉を止めて、教室での出来事を思い出す。
「……その辺にいたのとは違う、巨大な化け物も見た。空を飛んでいて……爬虫類のような、恐竜のような外見だった。一撃で鉄筋コンクリートの建物が簡単に崩れるほどの強さだ」
 少女は絶句する。
「数は多くはないようだが、たとえ一匹でも、二度と遭遇したくはない」
 そう補足してから溜息を吐いた。
「渋谷の置かれた状況はこんなところか。人間はほぼ全滅、そのあたりは化け物だらけ、正体不明の赤い花」
 口に出すと、渋谷ではなく自分の頭の方がどうかしてしまったのでは、という気になってくるが、そこを疑っても今は仕方がない。それに、もしそうだったらどれだけ良いことか。
 それで、と彼は少女の強張った表情を見据えた。
「……次は僕たちの状況だ。さっきは何があった? 君は何をしたんだ?」
 彼の問いに、彼女は少し沈黙を守ったあと、小さく口を開いた。
「わたしは……。超能力を……持ってるから」
 目線を逸らしながらそう答える。
「どういうことだ?」
 彼女はなにも言わずきゅっと唇を噛んでから、一度立ち上がると、近くの保温棚に並んでいたペットボトルの飲み物をひとつ手に取る。
「まだ温かいでしょ」
 それを彼に手渡す。停電のせいか少し冷めてはいるが、確かに温かい。
 彼女は指先をそのペットボトルに触れさせ、目を閉じた。
 何をしているのか、と彼が口を開こうかどうか迷った、その時。
 ペットボトルが、みし、と音を立てて、一瞬で中身が凍り付いた。
「っ……!?」
 まともに持ち続けていると凍傷を起こしそうなほどで、彼はそのペットボトルをごとりと床に置いた。
 彼女は俯き、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「こういう……力。炎を出したり、凍らせたり……ケガを治したり、できる」
「……なるほど。その力で助けてくれたんだな」
 彼は納得して頷いた。
 超能力。サイキック。オカルトの類だと信じていなかったが、目の前で見せられては信じざるを得ない。朦朧とした意識の中だが、化け物を焼き尽くした炎も確かに見たし、手や脚に受けていたはずの傷が治っているのもその証拠だ。
 それなら。
「他にできることはあるのか? ああ、あと、その力を使うための条件やリスクがあるなら、それも知りたい」
 彼の言葉に、少女は顔を上げ、きょとんとした表情を浮かべる。
「……? 何か変なことを言ったか?」
 訝しげに問う彼の顔をまじまじと見つめてから、彼女は肩の力を抜いて、笑った。
「ううん。でも、その話をする前に聞きたいんだけど……。……これから、一緒に行動してもいい? わたしはこんな力があっても……きっと一人じゃすぐに死んじゃう。けど、誰かがいてくれれば役には立てると思うんだ」
 それに彼は内心驚いた。
 彼女の申し出にではなく、自分に対して。
 とっくにそうするつもりでいたからここまで一緒に来てもらったのだ。
 だが、普段の自分ならそんな判断をしただろうか?
 自覚がないだけで、心細かったのか。
 助けてもらったことに対する負い目か。
 彼女が役に立つであろうという打算か。
 放ってはおけないという良心か。
 だがいずれにしろ、
「もちろん、構わない」
 と答える。
「ほんと? 良かった……ありがとう」
 嬉しそうににっこりと笑い、右手を差し出してきた。
「わたしは、ルエリシア。よろしくね」
 少女――ルエリシアのその小さな温かい手をぎこちなく握り返し、
「ああ。……僕は、ジムノ」
 と、彼は名乗った。

「この力は……すごくエネルギーを消費する、っていうのが一番の欠点かなあ」
 ルエリシアは三つ目になる握り飯を齧りながらそう呟いた。
 火事場泥棒よろしくコンビニの商品を勝手に拝借しているが、この状況では仕方がないだろう、と勝手に正当化することにした。
「すぐお腹が空くし……そのまま力を使いすぎるとだんだん寒くなってきて、意識も朦朧としてくる」
「なるほど。それは少し困った欠点だな」
「だよね……食べ物なんて自由に手に入らなくなるかもしれないし」
 あっという間に完食し、今度は菓子パンへと手を伸ばす。
 ジムノも適当な飲み物を見繕いながら、華奢な見た目にそぐわない食べっぷりの彼女をちらりと見下ろした。
 柔らかい印象で頼りなさげにも感じていたが、こうしてみると、極めて冷静な判断ができているように思う。
 食べ物や飲み物を選ぶのにも、当然のようにすぐ傷んでしまうものばかり手に取っており、この状況がいつまで続くか分からないということをしっかり意識しているようだ。
 彼を助けたときもそうだ。あの状況でパニックになるわけでもなく、的確にその力を振るっていた。
「心強いな。頼りにさせてもらう」
 そう告げると、彼女は驚いたような顔で見上げてくる。
「だが、君の言う通り、食料確保の問題がある。どうせ傷んでしまうような生ものが手に入るうちはともかく……その後はどうしても必要なとき以外、その力は使わない方がいい」
 でも、と彼女は少しだけ顔を曇らせる。
「わたし……この力の他に、何もできないよ? ただの足手まといにはなりたくない」
「いや」
 ジムノはかぶりを振った。
「君は僕なんかよりよほど冷静な判断ができていると思う。それだけでも充分だ」
 こんな時は、パニックになった人間から死んでいくものなのだから。
「むしろ僕の方が足手まといになりかねないからな、気を付けることにする。……せめて、武器になるものがあればいいんだが」
「武器、かあ」
 ルエリシアは少しぬるくなっているであろうシュークリームを見つけて手を伸ばす。
「いや、それも後で考えることか。そもそもあんな化け物と戦わずに済むならその方がいい」
「……うん。そうなるとあとは……この状況がいつまで続くか、だよね」
 ジムノは頷く。
「ああ。三日も耐えれば助けが来るのか、それとも待つだけ無駄なのか。やるべきことは変わるはずだ」
 そう言いながら、彼はルエリシアと同じシュークリームを手に取った。正直なところ、あの死体の山を見た後では食欲など湧かなかったが、食べないわけにもいかない。彼女の隣に座り込んで袋を開ける。
 こんなもの、次に食べられるのはいつになるのだろうか。
「聞いた話では、こうなっているのは渋谷だけではないらしい。僕自身も、学校から……遠くの街まで赤くなっているのを見た」
「じゃあ……最低でも、東京全体がこうなってると思った方がいいね」
「ああ。東京だけなら、数日から一週間もあれば助けが来るはずだ。ここに立て籠っているだけでもしのげるだろう。だが、最悪の場合は……」
 シュークリームをかじる。甘ったるい。
「……日本中が……ううん。世界中が、こうなってるとしたら……かあ」
 彼女はシュークリームをぺろりと平らげ、そう呟く。
「ああ。そうなると助けなど来ない。仮に来るとしても数週間から数ヶ月は先、というところだろうな」
「そうだとしたら……。……どうすればいいんだろ」
 世界中がこうなっているとしたら。
 あれだけ人間の詰め込まれていた渋谷でさえすっかり静かになってしまったのだ。こうして運良く生き延びている人間などごくわずかであることは想像に難くない。
「人間は滅びたも同然、ということになる」
「……うん」
 ルエリシアは沈んだ表情で頷く。
「どんな化け物がどれだけいるかもわからない。助けは来ない。きっと生き残ってる人も少ない。電気や水道は使えない。通信もダメ。食べ物や水はこうやってお店にあるものだけ」
「最悪だな」
 淡々と並べられた言葉に溜め息を吐いた。
「食べ物はしばらくは保つとして……着替えなんかもまあ……大丈夫かな」
 日用品の棚に視線を投げながら呟く。何か思い付いたように立ち上がるとその棚へと近付き、ごそごそと漁りはじめた。
「ああ、モノを手に入れるのは難しくなさそうだな。ここが渋谷っていうのは不幸中の幸いかもしれないが……」
「何か気になることがあるの?」
「……。えー……水道が止まると……トイレは困るな……」
「た、確かに……」
「短期的にはどうにでもなるが、長期化する可能性を視野に入れるなら衛生面も考えなければならない」
「そうだよね……そのへんもちゃんと考えなきゃ。サイキックでは治せない病気になるわけにはいかないし……」
「……考えるべき事が多すぎるな」
 自分たちだけでは限度があるような気がする。人間は一人や二人で生きていけるようには出来ていないのだ。
「……誰か、他に信用できる人間が見つかればいいんだが」
 ルエリシアは二本の懐中電灯を手に戻ってきて、「そうだよね」と溜め息を吐く。暗くなる前に、と片方を手渡してくれた。
「当てがあるの?」
 信用できる人間など、もとより兄と姉しかいない。
「……。僕の姉も……今日は渋谷にいたはずなんだ。僕より余程強い人だから、おそらく生きているだろうし……合流できると楽になる」
「そっか」
 彼女は頷く。
「わたしも……本当なら、連れがいたんだけど」
 それだけ言って、少しの間、口を閉じる。手元に視線を落とし、懐中電灯がきちんと点くかどうかを確認し、それからひとつ息を吐く。
「……。昨日……あの人たちから逃げてる途中ではぐれちゃって、それっきりなんだよね」
「ということは、渋谷にいるかもしれないのか?」
 ジムノの問いに、彼女は小さくかぶりを振った。
「……ううん。はぐれたのは新宿だし」
 あまり期待はしていなさそうな声音。
「生きてはいると思う。わたしのこと、探してくれているとも思う。けど……」
 彼女はそこでまた言葉を止めて、紙パックの牛乳を飲み干した。
「……今日はどこにいたかも分からないし、当てにはしない方がいいね」
「そうか。じゃあ、しばらくはここを拠点にしつつ……周辺で物資を確保したり、もう少し安全な場所がないか探索。……で、一週間ほどで状況が良くならないなら長期目線に切り替える。可能なら行動範囲を広げ、信用できる人間を探す……というところか」
 そうまとめると、ルエリシアは頷いた。
「うん、いいと思う。……ふふ」
 小さく笑った彼女に、ジムノは視線を向ける。
「よかった、一人じゃなくて。一人だったら……これから夜になるの、すっごく怖かっただろうな」
「……そうだな」
 安心しきった笑顔。
 強力な力を持っていて、的確な判断もできる彼女だが、どうしても無防備に見える。
「だが……こんな時に、あんまり他人を信用しない方がいいぞ」
 そう忠告すると、彼女は首を傾げた。
「他人?」
「僕のことだよ」
「ジムノくんなら大丈夫だよ」
 彼女はそう即答した。
「……何故そう言い切る? 君の力を利用するだけ利用して最後は見捨てるかもしれないぞ?」
「わたし、人を見る目はあるつもりだよ」
 冷たい言葉にも怯まずにっこりと笑う。
「そうするつもりがあったらそんなこと言わないでしょ。それに、昨日……ずっと逃げ続けてるときに助けてくれたのはジムノくんだけだった。それに、今日だって。サイキックを使って何人か助けたけど、他の人はみんな、わたしの力を気持ち悪がって逃げていった」
 笑顔は崩さず、ほんの少しだけ震える声。
「人間の姿をした化け物もいる、気を付けろ、だってさ」
「なっ……!」
 ジムノは絶句する。
 その反応に、彼女は一瞬驚きの色を見せてから、また笑った。
「ほら、やっぱり優しい。自分が言われてるわけでもないのに、そんなことで怒ってくれるんだもん」
 そんなことで、なんて。
 彼女もまた、他人からの理不尽な扱いに慣れてしまっているのだろうか、とジムノは思う。
 だが彼とは決定的に違うところがあった。
「……そんなことを言われてまで、他人を助けていたのか?」
 それが理解できない。
 他人に手を差し伸べれば差し伸べるほど自分が傷つくというのに。
「だって……知らない人でも、目の前で死んで欲しくなんてないよ。それに、そうしてたからジムノくんにもまた会えたんだしね」
「……」
「でも、助けようとしてるのに、危ないから逃げろなんて言われるとは思わなかった。だからこそ……そんなふうに言ってくれる人は絶対助けなきゃって思ったし、信じられるって思った」
 にこにこと嬉しそうにそう話すルエリシアをうまく直視できず、視線を外す。
 他人からこんなにも邪気のない笑顔を向けられることに慣れていない。
「だから、一緒にいてくれるなら……頑張って役に立つし、背中も預けるよ」
 そんなことを言われたのは初めてだ。
 何もかもが初めてで、気持ちがやたらと掻き乱される。感情に対する理解が追い付かない。
 ただ……嬉しい、と思っているのは確かだった。
 しかし家族以外の誰かに何か言われて嬉しいと思ったこと自体ここ十年以上の記憶になく、どう反応するのが正しいのかよく分からない。
 ――いや、違うか、と思い直す。
 これまでどんな反応をしたところで疎ましがられていたから、怖いだけだ。こんなことを言ってくれる彼女を信じるなら、怖がる必要なんてないはずなのだ。正しいも正しくないもない。
「……ありがとう」
 だから、彼はただ正直にそう口にする。
「え?」
「僕は……今まで誰からも嫌われてきた、から」
 改めて言葉にすると自分自身に刺さる。痛い。だが、続ける。
「……他人に親切にしたところで、余計なお世話だ何だと言われるだけだった。だから……昨日、君に礼を言われて、嬉しかったんだ」
「……」
 ルエリシアは何も言わず、少しだけ驚いたような表情で、じっと彼を見つめる。
「もちろん、他人から助けられることもなかった。だから今日君が助けてくれたのも嬉しかったし、こんな僕のことを信じてくれるのも、嬉しい」
 微かに声が震えているのが自分でも分かる。
 こんな風に自分の感情を言葉にすることが怖い。
 今までその言葉を受け止めてもらえることなどなかったのだから。
 しかし、彼女はまるでその恐怖を打ち消そうとするように、柔らかく微笑んでくれる。
「よかった」
 彼女はジムノの手を取った。両手でぎゅっと握られる。
 それがまた嬉しくて、苦しい。くすぐったい。熱い。何故だか泣きそうな気がして、でも涙は出ない。
 自分でも今どんな顔になっているのか想像が付かないが、彼女はその顔を覗き込んできて、幸せそうに笑った。
 思わず見とれてしまう。
 他人の表情ひとつでこんなにも自分の感情が掻き乱されることがあるなんて、知らなかった。
「……大丈夫だよ。わたしはジムノくんのこと、嫌いになんてならないから。だから……絶対、一緒に生き延びようね」
 自分に向けられるその言葉が、表情が、ちょっとした一挙一動が。
 そのすべてが鮮やかに心に刺さり染み込むようで、今日ようやく心臓が動き出したかのような錯覚に陥る。
「……ああ」
 ――こうして、何年も淡々と続いた安穏とした退屈な世界は、突然終わりを告げた。
 死が溢れ、化け物と赤い花に包まれ、それでも自分のことを信じてくれる他人のいる世界。
 今までに経験したことのない絶望と希望に揺るがされながら、彼は笑おうとした。
「よろしく、ルエリシア」

 ということで、2020シリーズの『ルエリシアとエリシャが、もしドラゴン襲来前日にはぐれてしまっていたら』というif時空のお話です。

 …というか、最初は本編をこの方向性で始めるつもりで途中までは書いていたのですが、これだと早いうちに書きたいことを書ききってしまいそうで「池袋か四ツ谷あたりで完結するのでは?」と打ち切り感溢れる完結位置が心配になってやめました。
 つまり内容はかなり被ってるので「うちのバカップルを説明するだけならこっち読むだけで充分かも」「あっちを読むならこっち読まなくていいかも」な感じになると思います。
 ある日突然世界がほとんど滅びたという非日常の中の日常生活、みたいな地味な話が欲しかったので、以前のボツ文章をサルベージして、続きを書き足しはじめました。